Quadrifolium's blog

元海外赴任サラリーマンの独り言です。

Do what you do best.

ロシア関連のニュースは気が滅入るようなものばかりだ。ニュースをつけっぱなしにしているとそっちに注意が持っていかれるので今はテレビもラジオも聞いていない。

ロシア国営通信が誤ってフライング送信した勝利記事の予定稿を見るとやたらと「冷戦後の国際秩序の主導権はアングロサクソンに奪われたが今こそロシアに取り戻す」みたいな文章ばかりでうんざりする。

ウクライナ侵攻勝利宣言の誤報・誤配信によって明らかにされたプーチンの頭の中 | 日本の科学と技術 (scienceandtechnology.jp)

アングロサクソン」という民族にプーチンは異常なまでの思い入れを抱いているということだろうか?ソ連崩壊の戦犯はアメリカとイギリスだと信じているのだろうか。ただの一日本人の私から見ると,民主主義陣営に属するフランスもドイツもオランダもノルウェーも広い文脈では米英と同じ陣営だと思うのだが,そのあたりプーチンがどう考えているのかよく理解できない。大体,旧ソ連の国々が次々とロシアを離れてEUに接近しているのはロシアが悪いだけの話だと思うのだが,それでロシアがEUや米英を恨むのはただの逆恨みでは?と思えてならない。

ウクライナのゼレンスキー大統領はコメディアン出身で政治の素人という評もあったが,危機的状況の中で肝が据わっているのには驚かされる。アメリカから退避を勧められても逃げずにキエフで指揮をとっているのは立派なものだ。まだ彼は44歳。70~80歳の老人たちが牛耳る日本の政界とあまりにも対照的で,泣きそうになる。日本に40代のリーダが誕生する日は来るだろうか?・・・まあ来ないんだろうな。やはりリーダはそれなりに若くないとダメだ。ここぞというときに気力が充実していないと話にならない。経験が足りないというなら周囲でベテランが支えればいい。どうして日本は当選回数〇〇回みたいな称号がいかにも政治的発言力のバロメータとして扱われてしまうのか,情けない。で,新しい風がふくとかいってたまに若い人が当選したと思ったら,元アナウンサーとか元スポーツ選手だったりして,政治について何も勉強してない連中がいそいそと議員バッジをつけて嬉しそうにしている。日本の政治は棺桶に片足をつっこんだ老人と頭が真っ白の素人の2グループしかいない。(こう書くと「でもゼレンスキーだって元はコメディアンでしょ」と言われそうだが,ゼレンスキーはウクライナで二位の有名大学を卒業しており,もともと知性のある人物である。)

 

話がそれたが,そもそもロシアはどうしていつまでも民主化しないのだろうか?もちろん今も形式的には選挙が行われており,野党も存在するわけだが,野党の有力者や政府に批判的なジャーナリストが放射性物質で暗殺されるような国はとても民主国家とは呼べない。あげくにオリンピックでもドーピングしてるし・・・。与党の政治家は汚職まみれだし。日本は敗戦後にすごいスピードで民主主義が根付いたのにどうしてロシアはいつまでも貧しく,格差社会で,非民主的なままなのか?私が若いころ,ドストエフスキーの本をいろいろ読んで,とにかくロシアってのは皇帝ってのが偉そうにしてる国なんだな~~と思った記憶があるが,今も本質的に何も変わっていない気がする。

 

あるとき気になって調べたけど,一つの説はロシアの軍隊の成り立ちにあるのではないかとだいぶ前に誰かが書いていた。ベルリンの壁崩壊のとき軍が民衆を攻撃しなかったように,民衆が政府を倒すタイミングではどうしても国民が軍を味方につける必要が出てくる。ソ連崩壊のときはエリツィンという権力の内部にいる人間が崩壊に関与していたから,軍隊の手綱をコントロールすることもできたのであろうが,今回のように政府内からの反逆者が出ない場合は国民が軍を懐柔するハードルは上がる。一般国民を徴兵する他国の軍隊と違い,ロシアは伝統的に軍は職業軍人たちが管理しており,彼らは権力者の命令に絶対に従うように訓練を受けているので,権力に逆らう国民を撃ち殺すことにためらいがないのだ,だから国民が政府を打ち倒すのは不可能に近い,という話であった。

あとはロシアがそもそも資源の輸出で食べていける国なので文明が進歩しないのだと私は思う。そのへんを掘れば石油や天然ガスが出てきて,それをヨーロッパに売っていれば金になる。こういう国では巨大な掘削設備を管理する組織に富が集中してしまい,国民の貧富の格差が開いてしまうので貧しい一般国民が豊かな中央のエリートに歯向かえなくなってしまう。まぁオーストラリアのように資源大国の民主国家もあるので一概には言えない部分もあるが,サウジのように女性の人権を抑圧する国が今も存続しているのは結局は国民が技術的イノベーションを起こさなくても食べていけるだけの資源があるからとしか思えない。

今後はロシアと中国が結託して世界を不安定化させていくのだろうか?それに対抗できるのは,アメリカ以外ではインドくらいしかないと思っていたが,インドは国連のロシア非難決議で棄権した。日米豪印(クアッド)の会合でもインドのせいでロシア批判のメッセージを打ち出せなかった。

日米豪印、ロシア非難見送り=ウクライナ対応で温度差 (msn.com)

インドという国はどうもうさんくさい。ロシアへの反応を見てもわかる通り,結局はただの風見鶏であり,力のある方になびくだけと思われる。今のロシアが侵しているのは独立国家の主権という巨大な原理原則であり,いわゆる民主主義とか基本的人権の尊重とかよりももっと上位の原則なのだ。にも関わらず様子見を続けるようでは話にならない・・・。安保理はロシアと中国のせいで機能不全,クアッドはインドのせいで機能不全。あげくにブラジルまでロシア寄りと来ている。うんざり。

そもそもインドの今の政権はヒンズー教至上主義に傾いており,イスラム教徒の人権を侵害している。

モディ首相が狙うのはイスラム教徒を「不可触民」にする新カースト制度だ | 改正国籍法を目撃したブッカー賞作家が「インドの終焉」を警告 | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)

カースト制度もいつまで経ってもなくならない。その一方でエリート層はアメリカ等へどんどん留学してGAFAMに入り込んでおり格差が激しい。若年層の失業率は,日本が4%,アメリカが8%でインドは22%である。まだ国として不安定極まりないという感じがする。

インド - 若年者失業率 | 2018-2021 データ | 2022-2024 予測 (tradingeconomics.com)

 

しかし危機・有事というのはバカ発見器として実に優秀だ。普段は賢そうにしていてもこういうときにしょうもない発言をするとすぐに真実がばれてしまう。いろいろな有名人がウクライナ危機について発言しているが,「武力行使は絶対によくないのでどちらの国も支持できない」とか「ロシアにいったん降伏すべき。でないと被害が増えてしまう」といった的外れな発言が多くて興味深い。そもそも日本人は平和ボケしているのだが,その最たるものが日本学術会議だ。科学者の軍事研究への関与に断固反対などと叫んでいる東大教授など学会の権威たちは頭がおかしいのかなと思う。普段自分たちが平和に研究ができるのは武力による抑止力があってこそでしょうに・・・。大体,科学と軍事技術を分けることなんて不可能だし,それに意味なんてないのである。アメリカのロケット技術を大きく進歩させ,アメリカ国家科学賞という科学者の最高の賞を1975年に受賞したドイツ系アメリカ人のフォンブラウンはもともとヒトラー率いるドイツ軍でミサイル技術の研究を陣頭指揮していた人物である。その彼が下地を築いたアメリカのロケット産業の延長線上に今のNASAはある。そのNASAが打ち上げたハッブル望遠鏡やケプラー衛星から得られた宇宙のデータに我先にと群がり,きゃっきゃ言いながら解析しているのは他でもない今の科学者たちである。

日本人として2番目のノーベル賞受賞者として知られる朝永振一郎も戦時中は日本海軍の研究所で軍事兵器の開発に理論面で協力していた。111-3_202.pdf (asj.or.jp)

軍事に関わることがいいとか悪いとか言っているのではなく,両者に明確な線引きはできないと知った上で自分の立場を貫けばそれでよいと思う。ただ近年の科学者はそのあたりの清濁併せのむような度量がなく,無邪気に反戦を唱えるばかりなのが遺憾である。今回のコロナ危機ではファイザーがワクチン開発に成功して世界をリードしたが,もし例えば世界でロシアの企業しかワクチン開発に成功せず,彼らが「ロシアに従う国には安く売る,民主主義国家には売らない」と主張したらどうなっていただろうか?たとえコロナで死人が大量に出たとしても民主主義の旗を捨てない,という覚悟が今の日本人にはあるだろうか?ないだろうな・・。この例でもわかるように,科学技術を政治から完全に切り離すことなんて無理であるし,またすべきでもないのである。そこを理解する技術者・科学者が増えることを祈りたい。

 

今回のウクライナ危機では”専門家”の頼りなさがあらわになった。例えばロシア通で知られる佐藤優はこの戦争の拡大前にこんなことを言っていた。

邦丸「首都キエフにロシア軍の兵が入ってきて、政府機関のコントロールするという危惧もありますが、これについてはどうですか?」

佐藤「それをやる可能性はないと見てます。それをやった場合にウクライナ人の反発が非常に大きくなりますから。プーチン氏自身もウクライナの占領は考えていないと明言してますから。ドネツク、ルガンスクに関しては親ロ派が占領してる地域以上、全域を支配するんだと思います」

しかし現実には,ドネツク,ルガンスクどころかウクライナ全土を占領しようとロシア軍の総攻撃が続いている。他にも「ロシアが戦争をするはずがない,ロシアにとって利益が少なすぎる。ウクライナ国境の兵力はただの脅しだと考えるのが合理的だ」などと自信たっぷりに発言していたロシア専門家はたくさんいたが,彼らの予想は全部外れた。いかに「専門家」というのがいい加減なものかというのが今回ほど明らかになったことはかつてなかったのではないか?コロナ危機でも,今後の動向について「感染症専門家」がこの2年というもの次々とテレビに出てきて持論を述べたが,彼らの予測はことごとく外れた。

よくAI・機械学習に対する批判として「学習に使ったデータの範囲のことはわかるが,新しい状況になると何もできなくなる。それが人間の対応力との違い」と言われる。しかし私に言わせれば,人間の専門家も自分の過去の経験の範囲内のことしか自信を持って判断できないのであり,そういう意味ではAIと何も変わらないのである。

 

まだ書きたいことはあるが,疲れたのでここいらで止める。