Quadrifolium's blog

元海外赴任サラリーマンの独り言です。

ストレス

今日はお寿司のパックを買ってきて食べた。うまかった。

 

大企業の管理職ってのは本当にリスクを嫌うタイプばっかりで嫌になる。プロジェクトのはじめに綿密な,「これでもか」というくらい細かいスケジュールを立てて,進捗状況を細かく報告させ,少しでも遅れが見られたら「どうやって挽回するんだ!スケジュールを作り直さなきゃならない!」みたいにパニックっぽくなってる。

 

そういう仕事の進め方ではクリエイティブな成果は出せないんだけどね。どうしてわからないのか不思議だ。クリエイティブな思考ができる・クリエイティブな仕事を好む人材というのは有名大学を卒業した「優秀な」人たちの中にも一握りしかいない。彼らは査定が上がるからとか転職に有利だからという理由ではなく自分が本当に好奇心をかきたてられるものに没入して仕事をする。プレッシャーをかけられて締め切りを押し付けられると,逆にやる気をなくして仕事のクオリティと本人のモチベーションが著しく落ちてしまう。だからクリアすべき最低ラインやどうしても重要な締め切りだけ設定して,あとはなるべく自主性に任せるのがいい。特に,一番最初の成果のかけらが出るまでは一番つらい時期だから,なるべく暖かく見守るのがよい。

 

プログラミング言語として今では超メジャーになったPythonも,最初はグイド・ヴァン・ロッサム氏がクリスマス休暇に何か面白いものを作ろうという動機で完全に趣味として作り始めたのが最初だ。ああいう新しいものは「これを作れ」と言われてその通りに作るようなタイプの仕事の仕方で生み出せるものではない。

 

インスピレーションというのは泥臭い努力(先行研究の調査とか)を重ねて重ねて,その上である瞬間にやってくるものだ。それがいつやってくるかは本人にも予想できない。これは笑い話だが,かつてフィルム業界で最大手だったコダックの研究開発部門の壁には,管理部門が貼った「重要な発見は午前中にすませておくように!」という指示が掲示してあったらしい。そんな無茶な指示があるか,という話だ。その後,コダックがデジタル化の波に乗れず倒産したのは周知の事実である。

 

もちろん,仕事内容が決まっているような場合には,こまめな進捗報告をはさみながら進めるのもありかもしれない。たとえばあるプログラミング言語Xで書かれたコードを別のプログラミング言語Yで書き直す,とか,長い文書をチェックして不備がないか確認する,とか。会計事務所が監査でやるような,すでに「正解」が決まっていてひたすらミスがないかチェックする仕事とかね。そういう仕事は,クリエイティブなモチベーションなんて湧かないから,外部からの強制力で無理やり自分を奮い立たせて仕事に向かわせるのもアリかもしれない。ただ,何をアウトプットすればよいかもふわっとしているようなクリエイティブな仕事では,細かい締め切りをたくさん設定しても何の意味もない。その違いがわかっていない人間が研究開発部門の管理職になると,部下も会社も不幸になっていく。

 

個人的な印象だけど,どうも組織で長年粛々と勤めて上にいく人というのは,「上から厳しいノルマを課されると燃えるタイプ」が多いような気がする。つまり,自分で自分の好奇心を駆動して自発的に新しいことにチャレンジするようなタイプではなく,上からかけられたプレッシャーを自分のモチベーションに変換してがんばるタイプだな。やり手の営業マンとかもそんな感じかもしれない。そういう人たちは,ノルマがなくても自ら努力して新しいことをやる人間が,どうしても理解できないようだ。組織としてある程度のまとまりの維持は必要だが,クリエイティビティのない管理職が分をわきまえず管理能力を発揮しすぎるとコダックのようにその組織は凋落するだろう。アメリカが9・11の後,エビデンスもないのに不毛なアフガン戦争に突入してしまったのも,CIAに人材の多様性が欠けていたからという説がある。会社の管理者の言う通りに行動するのではなく時には疑問を投げかけるような人材が組織内には必要だ。それが不要だと思っている人間は,自分の組織運営能力を過信している。つまり思い上がりである。