Quadrifolium's blog

元海外赴任サラリーマンの独り言です。

AIとか

AIの論文というのはどうも読んでいても楽しくない。何か本質的に新しいことができるようになったという研究はほとんどなくて,大体は人間にとって非常に自明なことを機械に代替させるための要素技術の開発の話だ。たとえば顔認識は人間にとってはごくごく簡単なことだが,AIでもできるようになったのは比較的最近だ。人間が簡単にできることを,機械がより正確かつより高速にできるのは便利だと思うが,感銘は受けない。サイエンスでの「発見」であれば,これまでにない事実がわかって,本当の意味で感銘を受けるのだが,AIというのはそういう新しさがないので,どうしても興奮しない。機械がミスなく手書き文字を認識してるのはすごいけど,だから・・・何?と思ってしまう。

人工ニューラルネットワークはすごいという宣伝文句が世間を一時期賑わせていたが,あれも人間の脳に比べればオモチャみたいなものである。人工ニューラルネットワークは脳のニューロン同士が作っているネットワークをいわば模写したものだが,脳の方がもっとずっと複雑だ。そもそも人間の脳にはニューロン以上に大量のグリア細胞があって,それが大切な役割を果たしていると言われているが,グリアは人工ニューラルネットワークでは完全に無視されている。

最新技術に期待をしすぎるのはよくない。どう頑張っても,人のつくったアルゴリズムはNP困難な問題に対してはしょせん手も足も出ないのである。しかし人の脳はもっとすごい。超巨大な素数を次々と口にするイディオ・サバンの兄弟についてオリバーサックスが本に書いている。インドの数学者ラマヌジャンは現代数学でも解明できないような不思議な数学公式を次々と直感的に発見したことで有名だ。人間にはNPの壁を破る謎の力がある。だから人の精神は偉大なのだ。我々は最新技術の宣伝に惑わされることなく,もっと謙虚にならなければならない。