Quadrifolium's blog

元海外赴任サラリーマンの独り言です。

話題先行

日本の大企業軍団が量子コンピュータを共同でプッシュしていくらしい。

【速報】「量子技術による新産業創出協議会」民間企業11社が今夏に設立へ 東芝/日立/富士通/NEC/NTT/トヨタなど参画 | ロボスタ (robotstart.info)

 

IBMやグーグルなどが量子コンピュータについて宣伝しまくっているので,最近はとにかく量子コンピュータすげえよという話題先行状態になっているが,中身はまだ実現にほど遠いという気がしている。コンピュータの実現に必要な量子ビットの数がまだ全然足りてないし。

 

でも物理学科の卒業生はこのブームのおかげで就職先には困らないらしい。物理屋にとってはいい時代が来たのかもしれない。しかし,GAFAアメリカ・中国のベンチャーが群れをなして量子コンピュータに先行投資しまくっている状況で,日本が今から挽回するのは100%不可能であろう。コロナワクチンと同じ構図だ。アメリカ等が開発した高価な最先端製品を日本は黙って購入するしかなくなると思う。

 

こういう状況を見て,「だから言っただろう,普段から基礎研究に投資するのが大事なのだ,金儲けばかり近視眼的にやっていてもダメなのだ」としたり顔で言う学識経験者が出てくるのが世の常である。でもこの意見は完全に間違っている。普段から上手に金儲けをしまくって資金を貯めこんでいる会社が,その余力を生かして基礎研究にお金を使うことでブレイクスルーが生まれるのである。つまり基礎研究以外でどれだけたっぷりと儲けを出して企業体力をつけているかが,勝負を分けるのである。そもそもの「稼ぐ力」がない日本の企業や研究所がブームにつられて量子コンピュータに投資をしても,リスクを吸収する体力がないので早晩力尽きるであろう。

 

数百年前のヨーロッパで物理学や化学の基礎を作った天才科学者たちのかなりの割合は,裕福な家に生まれついた貴族だった。彼らは食うものの心配をしなくてよいからこそ,才能を存分に生かして基礎研究に没頭できたのである。本質的な状況は現在も変わっていない。先立つものがないと何も始まらないのだ。